職業としてのプロジェクト(その12)

2009/08/14 中嶋 秀隆

オプティミストでいこう
前回に見たいくつかのサイクルは、個人の特性やものの見方、物事の取り組み方にも、際立った違いとなってあらわれる。物事を楽観的に見たりとらえたりする“オプティミスト”と、悲観的に見たりとらえたりする“ペシミスト”を対比して考えてみよう。
グラスの中にワインが半分ある。これをオプティミストは「まだ半分ある」ととらえ、ペシミストは「もう半分しかない」ととらえるという。
オプティミストは、物事を楽観的にとらえ→前向きの目標を設定して→積極的にチャレンジする。→そして、良い結果が出ると→自分の判断や行動に自信を深め→楽観の度合いをさらに強める。ここで仮に、積極的にチャレンジし→その結果がうまくいかなかったとしても→オプティミストはそれによって落ち込むことがない。そして、→物事を楽観的に捉え→「今度こそ」と、前向きの目標を設定し→次のチャレンジに挑み、いずれは、→成果をあげる。そして楽観の度合いをさらに強める。
一方、ペシミストは、そもそも物事を悲観的にとらえるため、→物事にチャレンジしない。その結果→成果に結びつかず→悲観的な見通しを確認するに留まる傾向がある。

この点について、心理学の分野で興味深い調査結果がある。オプティミストとペシミストと分けるのは出来事そのものよりも、その出来事を自分自身にどう説明するか、その説明スタイルにあるというのだ([3])。
この調査を要約すると、オプティミストは、良い出来事があると、それはいつまで続く(永続性)、いつもそうなる(普遍性)、私の打ち手が良かった(個人度)、と説明する。そして、悪い出来事があると、今だけでいつまでも続かない、このケースだけだ、状況が悪かった、と説明する。
一方、ペシミストは、良い出来事があると、今だけでいつまでも続かない(永続性)、このケースだけがうまくいった(普遍性)、他人・環境が良かったから(個人度)、と説明する。そして、悪い出来事があると、いつまでも続く、いつもこうなる、自分が悪かった、と説明する。

前出のアランによると、オプティミズムは意志の所産であり、ペシミズムは気分の所産とのことだ([4])。また、R.ローゼンブラットは、「30歳すぎたら、人生を親のせいにはできない。25歳でも、みっともないぐらい」といっている([5])。
さて、あなたの心のグラスのワインの量は、いかほどだろうか?

参考文献
[3]M.セリグマン『オプティミストはなぜ成功するか』講談社文庫、1994年
[4]アラン『幸福論(新装版)』白水社、1986年
[5]R.ローゼンブラット『だれもあなたのことなんか考えていない』早川書房、2002年[6]中嶋秀隆・中西全二『死ぬまでに達成すべき
25の目標』PHP研究所、2005年
”『プロジェクトマネジメント学会誌』より転載”