箇条書きの2つの形

2014/06/23 中嶋 秀隆

諸葛孔明の「後出師表」にユニークな箇条書きの形が出てくる。プロジェクトの国際化が進むなか、 こんな
箇条書きもあることを心に留めておいてもよいだろう。
現代ビジネスのコミュニケーションでは、論点を整理して伝えるのに箇条書きがよく使われる。その典型は、
次のように、 冒頭で論点の数をあげ、そのあとに順番の数字を示しながら、説明をするものだ。例えば、次
のように。

「私がお伝えしたいのは、つぎの 3 つのポイントです。
まず第 1 に、…
次に(第 2)に、…
そして最後に(第 3)に、…」

この形は英語でもそのまま使われるが、もしかしたら英語の方に原型があるのかもしれない。
“I would discuss three points.
First, …
Next (Second), …
And last, but not least, (third), …”

興味深いことに、諸葛孔明の「後出師表」では、これとは全く異なる形の箇条書きのかたちをとっている。孔明が主君の劉禅に意見を具申した文章で、 名文といわれるものだ。孔明は6つのポイントを箇条書きで述べているが、どのポイントでもまず各論の詳細を述べ、最後に「○◯点目です」とまとめている。 「後出師表」のポイントだけを浮き彫りにすると、次の形である。

「ここに謹んで陛下にそのことを以下のように申し上げます。 …今の陛下はまだその知恵においては劉邦には及ばず、陛下のはかりごとの巧みな部下たちの才能も劉邦の有名な参謀である張良や陳平には及びません。 にもかかわらず、すぐれた計画を立てて勝利のための計略を考えて、何もせずに天下を平定しようとお考えであるのはどういうことでしょうか。これは臣下の私のまだ理解していないことの一点目です。
…これは臣下の私のまだ理解していないことの二点目です。
…これは臣下の私のまだ理解していないことの三点目です。
…これは臣下の私のまだ理解していないことの四点目です。
…これは臣下の私のまだ理解していないことの五点目です。
…これは臣下の私のまだ理解していないことの六点目です。…」

プロジェクトの国際化が進むとともに、外国語や異文化の理解が求められているが、論の進め方という観点で、 箇条書きの2つの形(あるいはもっとあるかもしれない)を念頭に置くのも意味あることだろう。

以上