時間見積もりのあれこれ

2014/06/16 中 憲治

プロジェクトにおいてワークパッケージ(以下WP)の時間見積もりはプロジェクトマネジャーを悩ませる最大の要因の一つであるといえよう。 PMBOK®では過去の同様のWPの実績値を参考に見積もることを推奨している。しかし、プロジェクト経験が少ない組織、 経験があってもWPの所要時間実績など残していない組織がほとんどではないかと考えられる。そのような環境で教科書的な知識は役立たずと言われそうだ。

経験のない作業(WP)の時間見積もりをどのようにすればよいのか?このような問いに正解はないが、一つの在り方として、2 点見積もりも有効ではないかと考える。 二点見積もりとは、これも何らかの経験を必要とするが、WPの所要時間を、「確実性の高い所要時間」と、「意欲的な所要時間」の 2 つで見積もることである。「確実性の高い所要時間」とは、たとえば90%程度の確率でそのWPが終了するであろうと考えられる所要時間であり、 「意欲的な所要時間」とは50%程度の確率で終了するであろうと思われる所要時間である。この 2 つの見積もり時間を参考に、プロジェクトチームを取り巻く環境を考慮して、 適切な時間を見積もる(たとえば 2 つの値の中間値を採用するなど)ことで見積もり値の精度を上げることは可能であろう。

実は、このような議論をある機会にしていると、異論が出てきた。いわく、「日本の企業における実情は、全くそのような理論は通用しない。上司が『これでやれ』とか、 『もっと短時間でやらなければならない』といった意見が出てくるとそれに拘束される、それが現実である」この意見に反対はしない、それが実情であろう。一定の集団で議論をして一つの結論を導こうとしていると、集団の意思決定における錯誤が発生し、必ずしも論理的な意思決定が行われとは限らない 。非論理的な意思決定が優先される可能性が高い。

この様な状況を表す言葉がある「空気を読め」、「君の立場を考えろ」「状況を理解しろ」などである。非論理的(情緒的) 意思決定が論理的意思決定に勝る場面の方が組織の中ではほとんどではないだろうか。集団の意思決定における錯誤 、とそれを打破する集団による賢い意志決定の在り方については、次の機会にしたい。