修羅場をもちこたえる条件:開かれた心と学習(B)

2011/10/18 中嶋 秀隆

思わぬ困難や逆境に直面した人がその修羅場を乗り切る力を「心の復元力」といい、それは、1)健康、2)問題解決、3)自信・自尊心・自己イメージ、4)開かれた心と学習、5)セレンディピティの5つからなる。今回からは、4)開かれた心と学習を取り上げよう。開かれた心と学習には、①好奇心、楽観主義、柔軟性という3つの特質、②成功への取り組み、③〔人生という学び舎〕で学ぶ、④共感とシナジーの4つの要素があるが、今回は、②成功への取り組みと、③〔人生という学び舎〕で学ぶに集中する。

成功という語には代表的な定義が3つある。すなわち、あらかじめ選定した目標を達成すること、準備したことがチャンスに遭遇すること、ひとつの失敗から次の失敗へとやる気を失うことなく移行すること、の3つだ。中でも3つ目の定義は英国のチャーチル元首相の定義で、私はいちばん気に入っているものだ。変化が大きく、不確実性の高い今日、失敗はつきものであり、それを受け入れて前に進もうという姿勢を示すものだ。

大学の理工学部の授業で学生諸君に、学校と世の中では、学習とテストの位置づけがまったく違うということを強調して伝える。学校で学んだことは、そのあとにテストを受けて評価が下される。先に学習、あとからテストという順だ。しかし、世の中のいわゆる〔人生という学び舎〕では、まずテストを受け、そこから学習する。すなわち、先にテスト、あとから学習という順である。

さらに、テストの正解の数が違う。学校のテストでは、正解が1つあり、それを答えればよい。だが、世の中のいわゆる〔人生という学び舎〕で遭遇する問題には、正解が1つあるとは限らない。正解が1つだけある場合もあれば、複数ある場合もある。正解がまったくない場合もある。例えば、プロジェクトマネジメントの現場では、正解が1つだけあるのは、クリテティカル・パスの計算などに限られる。それ以外は、目標設定や作業の洗い出し、所要期間の見積もりや依存関係の設定、さらにはリスク分析にいたるまで、必ずしも明白とはいえない情報と付き合って、計画を立て、実行するというのが現実である。さらに、プロジェクトの作業分担は、その作業を完璧にできるスキルがあらかじめ備わっていることを前提とはしていない。不足分はにわか勉強やOJTで補いながら、成果を出すことが期待されているのである。

そこで、難局で全力を尽くしたら、落ち込まず、「これでいいのだ」と割り切っていこう。全力で対応し、もしうまくうまくいかなかったら、挫折してもいい。貴重な学習の機会であり、学ぶべき教訓が必ずある。その事実にうまく対応することで、飛躍のチャンスになる。そして、そして、「失敗の痛みは噛みしめても、致命的なものととらえない」(畑村洋太郎)ことにして、〔人生という学び舎〕での学習を続けよう。その体験により、はからずも人生を深く生きることになるのだから。
(次回に続きます)