人芯経営論 ・・・言葉の定義を考える③「前提条件」と「制約条件」の区別

2011/10/17 浅見 淳一

今月はプロジェクトマネジメントの世界では分けて使分けていますが、一般的にはあまり違いを意識して使われていない「前提条件」と「制約条件」の区別について書きたいと思います。

◆「前提条件」と「前提条件」の定義
新明解国語辞典(三省堂)では、「前提」は「ある物事が成り立つための土台となる条件」であり「制約」は「成立・行動の自由を制限する枠」(一部抜粋)です。
PMBOKの用語集からも参照します。「前提条件 (Assumptions)」とは、計画を立てるにあたって、証拠や実証なしに真実、現実、あるいは確実であると考えられた要因」であり、「制約条件(Constraint)」とは、所定のコースに沿って活動するまたは活動しないことに対して制約を受ける状態、性格、意識」と定義されています。

「前提条件」の中には、その条件が亡くなった時には、プロジェクト全体を見直さざるおえない条件なども含まれます。たとえば多くの社内の新規事業のプロジェクトは、「社長や社内の決済」が前提になっています。仮に決済が取れなかった場合は、プロジェクトの見直しや中止を検討する必要が出てきます。前提条件はプロジェクトが立ち上がる時の土台にあたるともいえます。

「制約条件」とは、設定された範囲の中で活動されることを望まれている条件になります。多くのプロジェクトの場合、納期(Delivery)品質(Quality)規模(Scoop)予算(Cost)などは制約条件になります。プロジェクトの活動の中で必要に応じて調整されます。制約条件は、プロジェクトにおいては柵にあたるともいえます。

実生活においては特に意識されませんが多くの前提条件の中で生活しています。「既成概念」と近い意味ともいえます。前提条件ですから「証拠や実証なしに真実だと信じられていること」になります。その前提条件はどのように個人の中に生成されるかを考えると殆ど全てが周りからのインプットされた情報によって個人の中に固定されます。それが正しい情報であればよいのですが、高度情報化社会になり、間違った情報や意図された情報が膨大な量が個人の中に流し込まれています。

昔は「地球は平ら」だと多くの人が信じていました。最近の新聞では「光速より早いスピードのものがある可能性がある」と出ていました。「ビックバーンはなかった」という説を唱えている科学者もいます。多くの信じられている説は仮説だということです。世論調査は全体の意見の縮図である。二酸化炭素が温暖化の原因である。などに関してもいろいろな意見があります。 何が正しいかは、私には判断できないことが大部分ですが、大切なことは、他の意見が自分が信じている前提条件と違うからといって頭から否定しないことです。前提条件(既成概念)を無条件に信じない。疑問を持ってみる。根拠を調べみる。自分なりに考えてみる。ことだと考えています。

<余談1>
10月1日の映画の日は「はやぶさ」を見てきました。プロジェクトマネジメントの研修やコンサルをしていますので、最近の明るい話題のプロジェクトということで初日に見に行きました。時が経つのを忘れるほど面白い映画でした。ハヤブサを打ち上げてから帰還させるまでのトラブルの数々を見ていると、自分が過去に経験したプロジェクトのトラブルなどはたいしたことがないと思え気持ちが軽くなりました。映画の中で日本のロケットの父と呼ばれている糸川英夫博士のエピソードを紹介していました。実験がうまくいかないかった時でも「失敗した」とは絶対に言わずに「成果が出た」と言っておられたそうです。エジソンは実験が失敗した時の「うまくいかない方法を発見した」という言葉と共通点があります。ポジティブな考え方が成功の秘訣です。

あくまでも個人的な意見ですが、主演の水島恵役の竹内結子さんは今まで単なるかわいらしい役者さんだと思っていました。しかし、オタクの科学者が成長していく演技が素晴らしかったです。素敵な役者さんだと見直しました。結構ファンになってしまいました。

竹内さんが、ハヤブサの声の役もやっていましたが、最後のエンドロールではハヤブサのナレーションのところに水島恵と出ていました。実在の人かと驚いて調べましたが、やはり竹内さんの役名でした。水島恵としてハヤブサの声をやったという思いなのでしょう。

プロジェクトにかかわっている方、苦労している方はできたら見ることをお勧めします。(映画会社の回し者ではありません)プロジェクト・マネジャーとしての決断することの大切さや、自分なりに学ぶこと考えさせられることが多い映画だと思います。