人芯経営論 ・・・「終戦のエンペラー」はプロジェクトマネジメントの映画?

2013/08/26 浅見 淳一

毎月 1 本は映画を観るようにしています。今月は「終戦のエンペラー」を観ました。

主なストーリーは、終戦の時に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官ダグラス・マッカーサー元帥へ、昭和天皇の戦争への関与を、10 日間で部下のボナー・フェラーズ准将が調査してレポートを出すという内容です。映画の冒頭から原爆投下の記録映像から始まり胸が詰まりました。

プロジェクトの映画と感じたのは、准将が 10 日間かで調べるに当たり、最初に「天皇の戦争への関与を調べる」と目的を設定し、調べる内容をツリー状に分解し、関係者の証言を取るために、対象者を明確にして、優先順位を決め、順番にヒアリングする。また当時の文書の記録調査の役割分担を決め、部下が調査に回るなど、システマチックに論理的に調査活動が進められていきます。組織として、無駄なく実に効率的に活機能しています。考え方や進め方はほとんどプロジェクトマネジメントの手法と同じです。こうした手法が、部下を含め全員に認知され理解されていることに驚かされます。

もし同じような調査を日本人が行った場合は、あくまでも私の想像ですが、まず大勢が集まり、何をやるか の意思統一から、どのようにやるかの方法論を話し合うのではないでしょうか。場合によっては、それ以前に、「私はこう思う」などの自己主張が延々と続く気がします。結局 10 日間たっても具体的な活動も決まらずに、議論ばかりしているのではないでしょうか?実際に多くのビジネスパーソンが、そのような経験を組織の中でしていると思います。

日本人は「全員のコンセンサス」を大切にする民族だといわれています。良いことですが、そのためにいつまでも成果が出せないのであれば、現在の国際競争の環境の中では、競争力がなくなります。プロジェクトマネジメントの手法は、原爆開発のマンハッタン・プロジェクトで大きく発展したといわれています。アメリカの軍隊の中では、共通の知識とスキルとして、学習していたのかもしれません。

あくまでも個人的な感想ですが、日米どちら側の立場や主張に偏らず、ニュートラルな視点で作られていま す。日本への見方はとても暖かな視線を感じました。このような映画がハリウッドで作られたことを不思議に思いネットで調べました。プロデューサーの中に、奈良橋陽子の名前がありました。製作のきっかけは、奈良橋が子どもの頃、映画にも登場している宮内省の側近として昭和天皇に仕えた祖父の関屋貞三郎から聞いた話だそうです。ラストサムライにも参加しています。どちらの映画も日本への愛情と尊敬が感じられます。素晴らしい映画を作ってくれています。日本人として観てもよいのではないでしょうか。

映画で、今まで教わらなかったこと、知るべきことの一端を学ぶことができました。占領軍のトップのマッカーサー元帥には何となくネガティブなイメージを持っていましたが、実は日本を救ってくれた一人かもしれないと感じました。当時の会見を通訳した人の話が、YouTube にありました。すごい時代です。映画の主題です。