適度な図々しさ

2011/03/20 中嶋 秀隆

責任ある、主体的行動とはどんなものだろう? 私は「適度な図々しさ」が不可欠だと考えている。真面目さや従順さ、素直さという価値はそれぞれに大切なものである。しかし、主張や価値観がぶつかり合う中では、成果をあげるには、それだけではいけない。

例をあげよう。2004年のサッカーアジアカップの準々決勝のヨルダン戦でペナルティ・キック戦にまでもつれた時のことだ。日本チームの先発・中村俊輔と三都主アレサンドロがPKを外した。足元が滑ったことにも原因があるかもしれないが、日本チームの主将。宮本恒靖は「ピッチ状態がよいほうでやるべきだ」と審判に申し入れ、主張を認めさせた。ペナルティ・キック戦での位置変更という図々しい申し入れは、史上初めてのことだという。そして、これが奇跡の逆転に結びついた。

私が翻訳分の推敲に頭を悩ませている時に、著名な翻訳家K氏に相談したところ、「もっと図々しく、これが私の考えだ (This is what I think.) でよいのでは?」というアドバイスをいただいた。

いずれも、真面目さや従順さ、素直さという価値からは、一歩踏み出した姿勢であり、自分のリスクを引き受け、物事に取り組むということであろう。責任ある、主体的行動の一特性といえるのではないか。
以 上