職業としてのプロジェクト(その11)

2009/07/17 中嶋 秀隆

失敗は成功のもとか?
失敗は成功のもと――よくいわれる言葉だ。しかし、プロジェクトやビジネスの現場、われわれの日常生活を見ても、これほど現実からかけ離れた希望的観測も珍しい。そして、プロジェクトの70%は失敗に終わっているという信頼すべき、そして残念な報告もある。
プロジェクトや一般のビジネス、そして日常生活で、特に気をつけたいのが、成功は失敗のもとともいうべきサイクルだ。よく検討せずに乗り出したプロジェクトや挑戦が、たまたまうまくいくことがある。それにより当社(や自分)は運が強い・能力が高いと勝手に思い込み、そこから学習しない(“慢心”してしまう)。その結果、せっかくの“体験”が“経験”へと結晶化されることがない。結局、次の挑戦では失敗するというサイクルだ。「最初に偶然成功するのは、けっしていいことではない」というアラン(フランスの哲学者)の指摘そのままである。

マイナスのサイクル:慢心

成功は失敗のもとには、別の角度から、もうひとつ用心すべきサイクルがある。“成功の復讐”とでもいうべきサイクルだ。ある挑戦が成功を収めたときに、その成功体験に過剰適応し、次回も同じやり方をすべきだと思い込む。その結果、以前とは状況が変わっているにもかかわらず、同じやり方で再挑戦し、あえなく失敗するというサイクルである。

マイナスのサイクル:成功の復讐

失敗から成功が生まれるために、たどるべきサイクルがある。それは自分が失敗したという事実を率直に認め、ほかの誰にも責任を転嫁できないという情けなさの中で”ほぞ”をかむ体験をし、失敗原因を分析・究明し、失敗の“体験”を貴重な“経験”として結晶化させる作業をすることである。失敗は成功のもとを現実のものとするには、このサイクルを避けて通ることはできない。
プロジェクトの終結フェーズで“事後の振り返り”を行い、教訓を抽出して、次のプロジェクトに申し送りするのは、成功をさらに強化して自社の卓越性(エクセレンス)を高めつとともに、失敗の“体験”を貴重な“経験”として結晶化させる作業であり、失敗は成功のもとを具現化させる鍵となる。
”『プロジェクトマネジメント学会誌』より転載”