修羅場を持ちこたえる条件:その1:健康

2010/09/15 中嶋 秀隆

思わぬ困難や逆境に直面した人がその修羅場を乗り切る力を、英語でResiliency (レジリエンシー)という。Resile という動詞の名詞形だが、Resile とは「人に踏まれて折り曲がったカーペットの繊維が、再度、元に戻る」ことを意味するそうだ。日本語では、「心の復元力」とか「心のしなやかさ」という語が当てはまるのではないだろうか。この連載では「心の復元力」を採用して、論を進めよう。

心理学者A.シーバートは、「心の復元力」は5つのレベルから成るという。
すなわち、1)健康、2)問題解決、3)自信・自尊心・自己イメージ、4)開かれた心、学習、5)セレンディピティの5つだ。

そこで、皮切りに「健康」について。
「健全な身体に健全な精神が宿れかし」は古代ローマの詩人、ユーエナリスの言葉だが、「宿れかし」とは「宿ってほしい」という願望を表している。昨今の健康ブームでは、健康オタクの人を「死んでも健康が大事」と揶揄したりするが、健康がすべての基本だ。そして健康は、健康診断や人間ドックではじき出される数字に留まらない。

健康には、日常的に過度なストレスを抱えない、自分を気にかけてくれる家族や友人に恵まれている、よいことや楽しいことを探し求める、ネガティブな経験からも教訓を学ぶ…などの要素が含まれる。また、いわゆる「前向きな姿勢」(現実の物事をプラスに解釈し、改善に取り組む」という行動様式)も健康の重要な要素である。

弊社のパートナーには、落語鑑賞とラブビー観戦を趣味とし、足しげく会場に通っている人がいる。日常生活に健康増進を組み込んでいるすばらしい例である。

参考資料:Al Siebert, The Resiliency Advantage, Berrett-Koehler, 2005
臼田甚五郎・監修『ことわざ辞典』日東書院、1989年