人芯経営論 ・・・言葉の意味を考える①論理的思考力、「因果関係」と相関関係」

2011/08/15 浅見 淳一

私にとっては、論理的思考力の言葉は、研修を生業としている関係で、良く聞きます。
「論理的思考力をつけるためには、どうしたらよいか?」「論理的思考力を育成するための研修はなにがあるか?」の問いかけを受けることもあります。しかし論理的思考力とは「何を意味しているのですか?」と聞くと明快な答えは、まず帰ってきません。(そんなことを聞くから嫌われるのかもしれませんね)
日本人は、何となく感性で判断する傾向が強いせいか、言葉がどのような意味をさしているかを理解しないまま使用する傾向があります。言葉を定義する習慣もあまりありません。これから何回かは言葉の意味、定義について考えてみたいと思っています。

◆論理的の定義
「論理的」の言葉の意味を、新明解国語辞典で引いてみました。「前提とそれから導き出される結論との間に筋道が認められ、納得がいく様子」と書かれていました。それを私風に簡単に表現すると「因果関係か正しいこと」ではないかと考えます。「因果」はというと「原因と結果」です。合わせると「論理的」とは「原因と結果の関係が正しいこと」になるのではないでしょうか。 時々人やニュースが話しているのを聞いていると、「因果関係」と「相関関係」の区別がついていないと感じます。「相関」とは「二つのものが密接に関係を持っていること」です。前に雑誌の記事で、地球温暖化の原因は、二酸化炭素ではなく、太陽の活動状況が一番影響していると書いてありました。そのメカニズムを論理的に分解すると、先ず温暖化の原因は「太陽の活動の活発化」になり、結果「気温が上がり」、それが原因となって結果「海水の温度が上昇し、海水に溶け込んでいる二酸化炭素が空中に排出される」になります。その理論が正しいか、間違っているかは、私には検証できません。しかし、仮にその理論が正しいとすれば、従来の理論は、最終の結果からさかのぼり、原因を結果にしている、逆説になっています。

もう少し身近な例としては、私は営業のトレーニングもしますが、契約数の多い営業パーソンとそうでない営業パーソンの営業活動分析で、データとしてよく抽出される結論は、契約件数の多い営業は、「提案件数が多い」、少ない営業は「提案件数が少ない」があります。その結果、対策として「提案件数をあげる」になります。
一見正しいようですが、少し考えればお分かりのとおり、契約件数が多い営業は、提案できるようなプロセスの活動やスキルがあるからです。そこを強化しないで、単に「提案件数」を管理特性にして、営業を管理しても効果が出る方が不思議です。企業がそんな風に考えるわけがないと思われるかもしれませんが、私の経験では、同じか似たような考え方で管理するケースは、びっくりするほど多いです。この場合の因果関係は、契約の多少の原因は、「営業パーソンのプロセスやスキルの差」であり、その結果が「提案件数の多少」と「契約件数の多少」になります。「提案件数の多少」と「契約件数の多少」は、「因果関係」ではなく「相関関係」になります。

◆思考力の定義
「思考」は、「冷静に論理をたどって考えること」になります。ですから「論理的思考力」とは「冷静に、因果関係が正しいかをたどって考える能力」になるのではないでしょうか。そういう風に定義を分解して考えると分かりやすいですし、どうすれば「論理的思考力」を高めることができるか、対策も考えることが出来ます。

「論理的」は因果関係を理解することですが、知識などの左脳の領域が大きくなります。好奇心を持って知識の量を増やす、考え方のプロセスを学ぶ。である程度向上できます。
「思考力」は、論理的なことを「冷静に判断する」ことですから、その人の経験や感性や性格に影響される、右脳の領域が多いと考えます。前に新聞で、勝間和代さんが「思考力は、自分で経験して、自分の頭で考えなければつかない」のようなことを書かれていました。私も、思考力はいろいろな状況に遭遇して、なんとかしようと考えなくては強化できないと考えています。正しい知識は、判断するための基準にはなりますが、知識だけで本当の思考力は付きません。その証拠に、PMBOKの42のプロセスの「ツールと技法」で一番出てくるのは「専門家の判断」です。専門家とは「その方面の高度な知識・技能を有する人」とあります。当然経験が豊富なこともその条件に入っています。

知識は、人への移植が簡単に行えますが、各々の経験は他人に移植することは困難です。今はインターネットでどんな知識でも得ることは簡単です。「現代はどんな知識でも価値は金銭に換算したらせいぜい250円」という説を読んだことがあります。だからこそ、これからはますます経験したことが価値を持つ時代だと確信しています。

<余談1>
久しぶりに日本映画を見に行きました。「大鹿村騒動記」です。最初に調べた時には上映期間が1週間くらいしかなくて見に行けそうもなかったのですが、主役の「原田芳雄さん」が亡くなったせいか、上映期間が延びて見に行けました。内容は、笑いの中に、地方の過疎、老人・痴呆の問題、地方の文化・伝統の伝承の問題など考えさせられる内容でした。面白かったです。良かったらDVDで見てください。

私が映画を見に行った一番の目的は、心の中で原田さんの葬儀に参列する代わりでした。高校時代、私や友人の何人かは、原田さんにあこがれていました。ドラマで、レイバンの黒のサングラス、黒の革ジャンと革のズボン、オープンのジープに乗っていて、ワイルドで本当にカッコよかったです。いまさら誰かにあこがれる年ではないですが、私の人生の中で一番あこがれた男優さんでした (人に言ったことありませんが) 。高校時代の思い出をありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします。

<余談2>
予定通り上野で「空海と密教美術展」を見に行きました。若い女性や外国人(外人は蔑称になると最近知りました。なんで?)も、沢山来て混んでいました。京都の東寺から仏像が8体と密教の道具なども多数展示されていて興味深かったです。行く前にいくつか空海に関する本を読みました。三田誠広氏の「空海」が特に面白くて読みやすかったです。事前に読んでから行くと,一層わかりやすくて興味が増すと思います。お勧めです。空海は、日本三筆の1人です。空海の真筆の書も展示されていました。私には字の上手い下手は分かりませんが、独特のエネルギーを感じる躍動感のある文字です。書が芸術になるのも漢字の素晴らしさです。母娘の親子が、「自分の好きな文字を探すのもいいね」と会話していました。私は「飛」の文字が特に好きです。見ることがあれば探してみてください。

仏像も何体も展示されていましたが、女性の一番人気は「帝釈天像」です。何といっても一番イケメンです。日本で一番ハンサムな仏像とも言われています。韓流スターばかりでなく、仏像の世界もイケメンの人気は根強いようです。
http://www.toji.or.jp/ten.shtml