人芯経営論 ・・・増大する情報

2011/02/15 浅見 淳一

NHKで最近まで「龍馬伝」がやっていました。大河ドラマはずっと見ていませんでしたが、龍馬伝は毎週楽しみにしていました。すごい昔の話のようですが、考えてみればたったの150年ぐらい前の出来事です。(私が生まれた時からさかのぼれば、たった××です。ナイショ)龍馬が生きていた時代は、電車も車も電話もパソコンもなかったのに、よくあのような活動ができたものだと、ただただ感心してしまいます。

龍馬の時代と今の時代で個人が接する情報量を考えてみました。龍馬の時代の情報量を1とすると、新聞や雑誌で100倍の情報量。そこからテレビやラジオがでてきて100倍の情報量。さらに携帯やインターネットで100倍の情報量は最低限増えていると考えています。掛け合わせてみると龍馬の時代より100万倍以上も情報量が増えている計算になります。龍馬の時代の人と現代人とを比較して、人の能力が100万倍伸びたとはとても思えません。データでは体格は大きくなっていますが、精神的にはむしろ弱くなっているような気がしています。

現代人は津波のように押し寄せてくる情報に飲み込まれている。と表現されます。大量の情報を処理するために、会社では仲間とおしゃべりする時間や食事の時間もないほど仕事におわれています。家に帰れば情報を収集するために寝る時間を削ってテレビを見たり、インターネットをしたりしています。最近は多くの会社では今一人一台のパソコンが支給されています。朝、挨拶もせずにパソコンの電源を立ち上げて、黙々と仕事を始める光景が増えています。私には、人がパソコンを使っているのではなく、人がパソコンの端末になったように見えます。人とのリアルな接触やコミュニケーションが減り疎外感にむしばまれ精神的に病んでいる人も増えています。これからのオフィスは、毎日30分ぐらいはパソコンから離れて、お互いが話し合う時間を作った方が、仕事の効率も良くなり、人間関係も良くなるとのではないでしょうか。お勧めです。

時間は大きく分けると食事や睡眠など生きて行くために必要な「生物的な時間」以外に「有意義な時間、価値を生む時間」と「無駄な時間、浪費している時間」に分けられます。無駄な時間を極力なくすことで有意義な時間を増やすことができます。テレビの漫画で「等価交換の法則」と言っていました。何かを得るためには、何かを失わなければならないという意味です。大切なものを得るために、何か大切なものを失う必要はありません。不必要なもの、無駄なものを失えばいいのです。情報を効率的に処理する必要性はずいぶん前から言われています。しかし現代の情報量のレベルは効率化で処理できるレベルをはるかに超えています。情報を効率的に処理することを考えることから、必要でない情報は意識的に遮断することを考える段階に来ています。情報を遮断するためには、先ずは不必要な情報を選別して、次は意志の力でその情報源に近づかないようにする必要があります。決して簡単なことではありませんが、「有意義な時間」を作るために試してみてください。来月は、私が何を「無駄な時間」として遮断したかをご紹介いたします。

<余談1>
今月の映画は「ソーシャルネットワーク」を見ました。コンサルがよく言う言葉に「キャッシュポイント」があります。儲けどころ、どこで利益を出すか。の意味です。仕事柄ネットビジネス関連の会社ともお付き合いがあります。私には多くネットワークビジネスのチェクポイントがよく理解できません。携帯ゲームの会社の方に「アイテムの販売がキャッシュポイントです」と教えていただいきましたが何となくピンときません。映画を見ましたが、その辺はやっぱりよくわかりませんでした。創始者のマーク・ザッカ―バーグの友人がSNSの広告スポンサー獲得のために苦労して営業に回った行動は、私にはとてもよく理解できます。マークは別のパートナーとベンチャーキャピタルなどからの投資でどんどん会社を拡大していきます。私にはその手法とスピード感が別世界の出来事のように見えました。マークの友人は疎外感を感じていました。マークが見えている世界が想像できなかったからでしょう。これからの世界で伸びていく会社は、物を作る会社ではなく、情報を運ぶ会社、情報を処理する会社に、産業構造が変わってきています。少し前に言われた「知価社会」なのかもしれません。

映画に面白いシーンがありました。マークが会社を興し、カリフォルニアに行くときに、プログラマーを採用する場面です。採用希望のSEにハッキングやプログラミングの競争をさせ、失敗したら罰にお酒を飲ませていました。お祭りのような大騒ぎの中で、短時間でハッキングに成功した2名を採用していました。(たぶんハーバード大学の学生ですから)良い大学の良い生徒が、訳の分からない会社に賭けるベンチャスピリットに驚きました。新しいものを生み出すためには、多くのエネルギーが必要です。そんなエネルギーに満ちあふれていました。それと採用する側が、欲しい人材に対して求める能力がはっきりしており、明確な採用基準があるところに感心しました。実戦的です。

PMでは「リスクには、マイナスだけでなくプラスの側面もある」と説明されています。危険を和英辞書で引くと「danger」「risk」が出てきます。しかしRiskには「冒険」の意味もあります。そういえば「リスクをとる」とは言いますが「デンジャーをとる」と聞いたことはありません。積極的にリスクをとるかとらないかは、国民性や文化の違いも影響しています。変化が少ない時、時代が安定している時には、新しいことを行うことはリスクが大きくなります。逆に変化の大きい時、時代が不安定な時は、なにもしないことが大きなリスクになります。これからの時代は変化に対応できない人や企業、変化を生み出せない人や企業はますます厳しい時代になります。逆に変化に対応できる人、変化を生み出せる人には、力が発揮できる面白い時代になります。時の女神は「楽しめる人」に微笑みます。