人芯経営論 ・・・利と義

2010/12/15 浅見 淳一

早いもので、今年もあとわずかになってしまいました。考えていたことの半分も出来ていませんが、それはそれとして棚卸して、今年出来ることは行い、出来なかったことは来年の課題として取り組みたいと思っています。今年一年を振り返って反省するのに、良い時期かもしれません。

最近、自分自身が物事を判断する基準として「効率的か」「メリット(利益)があるか」が大きいことに気づきました。成果主義や拝金主義の考え方に毒されているようで、なんか心が貧しい気がします。やや自己嫌悪です。

論語で利についていくつか述べられています「小利をみることなかれ。小利を見ればすなわち大事ならん」「利によりて行えば、恨み多し」「君子は義にさとり、小人は利にさとる」小さい人間は自分の損得ばかり気にするということです。利は利益や勝抜くことを求める心、義は正義や思いやる心です。現代は利の時代から義の時代に移りつつあるという意見も聞きます。私は企業研修に長年携わってきましたが、考えてみると企業で実施されている研修の多くが「利の教育」です。企業として、どうやって効率をあげていくか、どう利益を出すか、どのように発展させるかを追及してきました。そうした部分はもちろん大切です。しかしドラッカーも「利益は、企業や企業活動にとって、目的ではなく、条件である」と、松下幸之助氏は「企業作りは人作り」と言っています。企業も社会も人がいてこそ成り立ちます。利己的に自分の利益だけを追求して一時は繁栄しても、永続性がないことは、歴史も証明しています。来年はもう少し広い視点で、仕事にも取り組みたいと考えています。

<余談>
両国に小さくてアットホームな寄席があります。いつも開催しているというわけではありませんが、1500円でお得です。円楽さんが出る日に見に行きました。満員でした。落語はほとんど知りません。今回の「桃太郎」の話は勉強になりました。落語の中で、桃太郎の童話は人が成功するための教えが入っていると語っていました。桃太郎がひきつれた、犬は恩(仁)、猿は知恵、雉は勇気を表している(儒教では)そうです。鬼は世間の荒波を表し、それを恩と知恵と勇気でみごと乗り切り、信頼という宝を持って帰ってくる。そんな人生訓になっているそうです。なるほどと感心してしまいました。

雉がなぜ勇気を表しているかと言うと、「雉は子供と一緒の時に、野犬や猟師がそばにくると、家族を守るために、家族から離れたところに走り、そこから声を出して飛び立ち、猟師を自分の方に引きつけて家族を守る」ところからだと聞いています。
そこから「雉も鳴かずば撃たれまいに」のことわざも出ています。このことわざをネットで調べてみました。読むと子供のころに何かで聞いたことのある話だと思い出しました。昔の日本がとても貧しかったことが分かります。あわれなお話です。
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/10/12.htm

飽食の時代と言われ、多くの日本人は、毎日当たり前のように白いお米を食べています。でも、ほんの少し前までは、「白いお米のご飯をおなかいっぱいに食べたい」ということが、日本人の一番の夢でした。太平洋戦争の戦時中は、最後の出兵の時に兵士にお米とお酒が出されたという話を聞いたことがあります。それを思うと今は、本当に豊かで平和な時代で良かったと、生まれてきた時代に感謝の気持ちがわいてきます。

気の漢字の中のメは、旧漢字では米を書いていました。お米を食べると日本人は気力が生まれるということでしょうか。お米の漢字は、お百姓さんが八十八の手間をかけて作るところからきています。大切に感謝して食べたいと思います。

歴史は常に変化し、その時代の人にはいつでも大変なのかもしれません。落語を聞いて、笑って、幸せな気持ちになりました。来年のキーワードは「笑顔」で行こうと思います。