人芯経営論 ・・・「IT システムの幻想」

2012/03/15 浅見 淳一

System の言葉の意味は、「装置」以外に「体系」とか「方法」があります。もともとは『仕組み』の意味です。しかし、一般的にシステムというとソフトウェアで構成された IT システムのイメージを持ちます。今回は IT システムのことについてです。プロジェクトマネジメントの研修をしていると、「PM のソフトは何がいいでしょうか?」のご質問をよく受けます。「今はいろいろなソフトがありますので調べて、御社で特に管理したい項目の機能が使いやすいものを選択すれば良いと思います」お答えしています。また営業のコンサルでは「CRM を入れました」「SFA を使っています」と言われることがあります。使用の実態を聞いてみると、大体が期待したような効果が得られなかったり、ひどい時には入れたけどほとんど使っていなかったりします。PM や営業管理のソフトウェアが上手く利用されていない企業で聞いてみると、ほとんどの場合 IT システムを入れると、それだけでみんなが利用してくれて、きちんと管理ができて業務の効率が図れると思って導入しています。私にはこれは幻想としか思えません。

ソフトウェアは所詮、管理するための道具(ツール)です。ソフトウェアが人の替わりに、何かを考えてくれたり創造的な発想をしてくれたりする訳ではありません。プロジェクトでも営業活動でも実務(リアル)で出来ていないことが、ソフトウェア(バーチャル)でできるはずがありません。そんな単純なことを勘違いしている人が結構いるように思えます。 私はソフトウェアを導入する前に、実際にリアルで管理する仕組みを作ることをいつもお勧めしています。リアルでできていることをバーチャル(ソフト)に置き換えるのであれば、情報共有が容易になったり管理が簡単になったりします。しかしそのためには多くの場合仕組みづくりや組織の説得が必要です。人は変化と仕事が増えることは本心では嫌います。多くの場合はトップの指示かやらざるおえない状況になるまで組織や人は変わりません。ギリギリにならないと決断できないことは日本の大きな弱点です。

<余談>
今月も両国寄席で圓楽さんの落語を聞きました。最近は圓楽さんが出る日は満席です。若い人も結構います。落語は不思議です。同じ話でもうまい人の落語は毎回笑えたり楽しめたりします。漫才やコントだと聞いたことのある話は興味が半減します。これが話術、話芸ということでしょうか?
中には 40 歳過ぎてから落語家になった人もいます。落語家になった理由を聞いたことはありませんが、「女性にもてたい」とか「お金持ちになりたい」といったことが動機だとは思えません。食べるのには困らないとは思いますが、お金持ちやアイドルのようにモテルとようにはとても見えません。
ほとんどの人が「落語が好きだから」「人を笑わすことが楽しい」が理由だと思えます。私たちは、お金の量で物事の判断や価値を決めがちですが、「好きだから」とか「人の役に立ちたいから」とかそんな純粋な理由で仕事をしている人が、世の中にはたくさんいることに気づかされます。