レジリエンシー(復元力)ということ(その1)

2010/06/21 中嶋 秀隆

今回から何度かに分けて、レジリエンシー(復元力)について取り上げよう。こんにち、20歳前後で学校を卒業し、社会に出てビジネスに従事すると、働き続ける期間はおよそ40年に及ぶ。その間には、嬉しいことや楽しいことがたくさんある。仕事で成果を上げる、より大きな責任を引き受ける、結婚して家庭を持つ、子どもを授かる、その子が成長する…などはその代表であろう。

一方、思うに任せないことや辛いことにも必ず遭遇する。「会社の寿命20年」といわれるビジネス界では、市場の激変や勤務先の経営上の問題、部門の売却、リストラなど、本人の責任ではないが苦痛を伴う出来事もある。また、本人や身内、親の健康が失われるとか、近親者に死なれるということもある。そんな時に「人生は理不尽だ」(Life is unfair.) と叫んでも、解決にはならない。そういう辛いことを乗りきるための特性として、最近、注目されているのがレジリエンシー(復元力)という特性だ。

身体や精神のあり方を、望ましい順に、「元気」「健康」「病気」と大別する方法がある。さらに、東洋医学では「健康」だが「病気」に近い領域を「未病」というそうだ。上のような「理不尽」に遭遇した時に適切に対処しなければ、「元気」や「健康」を損ない、「未病」や「病気」の状態になることもある。

だからといって、理不尽な状況を鉄面皮で何も感じないのがよいわけではない。自分の気持ちを大切にし、悲しむ、悼む、辛さに堪える、などのことができなければいけない。その上で、そこに留まらす、自分の気持ちに一定の折り合いをつけ、本来の「健康」「元気」の状態に戻らなければならない。それができた時に、誰もが前より強くなっているという。そういう力のことを英語で「レジリエンシー」(Resiliency)というそうだ。日本語の適訳はまだ見つからす、「しなやかさ」「へこまない」「回復力」などが考えられている。「心の弾力性」もよいかもしれない。

プロジェクトのチャレンジを引き受ける人たちに、元気をもとをお届けできるかもしれないと考え、次回から何回かに分けて、「レジリエンシー」についての考察を報告させていただきます。

参考文献:
Al Siebert, The Resiliency Advantage, 2005 (邦訳、アル・シーバート『凹まない人の秘密』林田レジリ浩文訳、ディスカヴァー)
Al Siebert, The Survivor Personality, 1996 (邦訳、アル・シーバート『「逆境に負けない人」の条件』林田レジリ浩文訳、フォレスト出版)

以 上