プロジェクトは特殊解

2009/10/09 中嶋 秀隆

日本では昔から、仕事をうまく進めるための言い伝えとして「段取り8分に、実行2分」と言ってきたが、この原則は定常業務にもプロジェクトにも当てはまる。そしてプロジェクトは、スコープ、時間、資源の3つの制約条件が突きつけられる分、定常業務よりも難しい。

コンサルタントとして多くのビジネスパーソンに接していると、プロジェクト・マネジメントの対象とは考えにくいことが、課題として話題にのぼることが少なくない。たとえば、会議の招集の仕方や進め方、議事録の書き方などだ。さらに、依頼者や顧客の示す方向がころころ変わる(いわゆる、ツルの一声)とか、社内の政治的事情に左右されるとか、そもそも無理なことを引き受けさせられるといった悩みを伺うこともある。

最近、プロジェクト・ポートフォリオとかエンタープライズ・プロジェクト・マネジメントという言葉が広がってきたが、その背景には、単一のプロジェクトをひとつだけ取り上げてうまくやろうとしても、なかなかうまくいかないという現実がある。

企業経営の形としては、まず使命(ミッション)、ビジョン、価値観があり(文書化して共有し)、その下に、定常業務とプロジェクトの集まり(つまり、ポートフォリオとプログラム)があるのが本来の形だ。

そして、定常常務がしっかり行われているところでなら、その知見に基づいて、(常業務よりも条件が厳しい)プロジェクトの成功が可能になる。だが、定常常務がしっかり行われていないところでは、土台がしっかりしていないので、プロジェクトの成功は簡単ではない。

言うまでもないことだが、プロジェクトでは全体像を明確にし、個々の作業を(期限とともに)誰かの業務として明確にしなければならない。そのためには、一般解としての定常業務をまずしっかりやらなければならない。そして、その上に特殊解にあたるプロジェクトと実施する必要がある。順序は逆ではない。