エンジニアの為の PM の工夫(その3)=シニアマネジメント編

2007/10/18 酒井 昌昭

プロジェクトのチームメンバーにPMの知識が備わり、プロジェクトへの積極性(やる気)が出てきたとき、そのエネルギーを絶やさずに組織活性化に結びつけるのは上位マネジメントの責任である。ところが、最近のプロジェクト現場でよく経験する事は、上司の姿が見えない事である(プロジェクトのオーナー)。中間マネジャー層が社内調整や経営層からの特命事項など多忙を強いられている事は容易に推察できるが、それにしても・・である。筆者の乏しい経験に照らすに、現在のシニアマネジャー層(ここでは一般的部長クラス以上と仮置きする)が実プロジェクトの「立上げ・計画」にあまり関わっていない姿が散見される。肝心のプロジェクトの初期段階では殆ど姿が見えないわりに、進捗管理の段階になると途端に細かく口を挟む傾向にあるようだ。
これはどう見てもおかしい。逆転現象である。プロジェクト活動は「経営」に直結する活動である。プロジェクトの初期段階での方向付けこそが、その命運を決める。
シニアーマネジャーとして、プロジェクトへ関わるポイントはそれ程難しいものではない。プロジェクト活動を、部下の成長と育成の場でもあると位置づける事である。具体的ポイントとしては、下記である。1.上から言われた課題を自分なり(間違えても良い)に咀嚼し、部下におろすこと。即ち、丸呑み、丸投げは駄目。2.シニアーマネジメントとして、自分のビジョンを簡潔に表現し、部下に伝達できる機会であると心得る。即ち自分の評価基準を明確にする。3.部下の管理を細かく管理はしない。箸の上げ下ろしはせず、ポイントのみに関与する。細部は全て現場に任せる。
上記のみマネジメントせよと言われてもマネジャーとしては当然心配である。今までの慣習で、特に細部を確認しないと心配になるのは良く判る。安心できるようになるには、それなりの段取をはかれば良い。それがシニアーマネジャの仕事の段取術である。ポイントは下記。1プロジェクトの立上げ時(スケジュール策定以前)にプロジェクトに積極的に関わるべし。
メンバーにODScとS-NW(骨格ネットワーク図)をまとめさせ、ベクトルを合わせよ2プロジェクト計画は複数案作らせろ。その中から1つだけ選択せよ。
このとき、自分の評価基準を明確に説明せよ。3実行コントロールでは、重要なデシジョンポイント又はマイルストーンでのみ関与せよ。大局的観点からポイントのみのみをアドバイスし、細部は任せろメンバーの自主性を尊重し、小さな失敗はOJTの授業料と思え=育成の視点
これだけで、プロジェクトメンバーの行動が全く変わってくる。筆者の属していたソニー(元気一杯の時期)の名経営者の1人である大曽根幸三副社長(当時専務、ベランメ調)が、部門の部課長連中を集めていった名言がある。「おめー達、マネージャークラスがしっかり気概を持って方向を示さねーと下は何やっていいか判らんジャねーか。上がファジーなら下はビジーてなもんだ」。