「ガント・チャートの功罪」

2006/02/13 酒井 昌昭

プロジェクトマネジメント(PM)では最もポピュラーなツールが「ガント・チャート」、いわゆる「線表」である。
ヘンリーガントが1920年頃に発明したといわれ、今や殆どの業界で、PMは知らなくても「線表」は引いている。
これ程に市民権を得たのは、ガント・チャートには優れた点がある故である。
それらは例えば、
・作業と時間軸が一目で把握できる
・全ての作業の依存関係が見える
・プロジェクト全体像と個別の作業の関係性がわかる
・CPと非CPのパスが見えるので重点管理・例外管理がしやすい
・計画と実績が一目でわかる
等である。
特に作業と時間軸を直感的に見て取れる故に、一気に普及したとも言われている。
以上が良い点。

良い点ばかりかというと欠点もある事に筆者も最近気がついた。
線表上では容易に変更が出来るが故、誤ったパラドックスに陥りやすい。
全体を簡単にクラッシング(圧縮)したり、ファスト・トラッキング(早めの見切り作業の開始)等が容易に出来るため、
結果的に『作業の依存関係や作業の成果物の軽視』がおきている。
表面だけをつないで一種形骸化した「線表」が、一人歩きしてしまう。
便利ゆえに、その本質が軽視された事に気づかない事になる。
そういえば、以前、ある先輩に「線表にするからプロジェクトがおかしくるんだ」と言われた事がある。今になってその意味が分かった。
PMの計画で本質的に大切なもの:それは「線表」ではなく、「ネットワーク図」だと思う。
「筆者の理想の線表」は、作業の依存性をしっかり押さえた上で、時間軸を表現したものであるべき。
上記概念をうまく表記できるPMソフトウエアが出来ると良いのと思っている。