生成発展と変化
現在わが国は“100年に一度”といわれる不況の最中にあり、経済指標は軒並み芳しくなく、働く人の生活の安定も、一部とはいえ、ままならない状況に陥っている。
しかしこうした状況でこそ、先人に習い、世の中の流れを“生成発展”のプロセスととらえたい。「この大自然、大宇宙は無限の過去から無限の未来にわたって絶えざる生成発展を続けているのであり、その中にあって、人間社会、人間の共同生活も物心両面にわたって限りなく発展していくものだと思う」からだ([1])。
日本は第二次世界大戦で国土を焦土と化した過去をもっている。その後、60年余の間に、日本経済は奇跡の復興を遂げ、高度成長を実現させた。現在、確かに不況に直面してはいるとはいえ、日本の経済力は世界第2位の規模を持ち、全アジアの60パーセントを占めている。1人当たりGPDは中国の30倍、韓国の4倍という高さである。
この戦後の復興の背景には、日本人の勤勉さが力を発揮したことは間違いない。こんにち世界のある地域には不幸にも国土を焦土と化している国があるが、そういう国が60年後に世界有数の経済大国になると予測することは難しい。
また近年の目覚しい技術革新とグローバリゼーションにより、われわれの生活は一変した。海外取引を例にとると、海外のビジネス相手と見積り・発注の情報を一往復させるのに、かつては船便で数ヶ月を要していたが、今では電子メールでほぼ瞬時にできる。歴史的に見ると、科学技術は20世紀に道具としての性格を維持しつつ環境となり“技術連関”を成立させたが、21世紀に入るとノートパソコンや携帯電話のように、科学技術の“技術連関”が一歩進んで、携帯し活用できる道具となってきた([2])。
そして近代以降の人間がいつも直面してきた課題は、世の中の変化であり、変化にいかに対応するかである。
参考文献
[1]松下幸之助『実践経営哲学』PHP、2001年
[2]今道友信講演、2009年1月17日
”『プロジェクトマネジメント学会誌』より転載”