QCD の浸透

2016/04/15 中嶋 秀隆

 20 年ほど前、インテルに勤務している時、主力商品であるマイクロプロセッサ「ペンティアム」で品質問題が発生した。その時、新入社員のひとりから「品質問題を一切起こさないし鵜品はできないのか?」という質問を受けたことがある。私はすこし考えてから、「できるかもしれない、コストを無視すればね」と答えたことがある。

 プロジェクトには「3 大制約条件」(Triple Constraint)がある。つまり、①品質・スコープ(成果物に求められる品質レベルとそのために成すべきこと)、②コスト(投入可能な予算)、③時間(プロジェクトの完了に要する時間)の3つだ。この三者は相反することが少なくない。例えば、品質・スコープの要求を高めようとすれば時間の延長やコストの増大につながるし、予算を削減しようとすれば、時間の延長や品質の低下や、スコープの削減につながる。さらに、時間を短縮しようとすれば コストの増加や品質の低下、スコープの削減につながる。

 こういう相互に相容れがたい状況でどのように対処するかは、歴史という縦軸でみても、ようの東西という横軸で見ても、常に課題である。そういえば、わが国の古典の中にも、二律背反を嘆く名台詞があった——「忠ならんとすれば孝ならず。孝ならんとすれば忠ならず」。

 プロジェクトマネジメントでは PCD について、3 つの制約条件のバランスをとることが大切であるとして、そのために、三者の間の優先順位(トレードオフ)を明確にすることを教えている。

 今日のビジネス・シーンには PCD という言葉が広く浸透している。PM の普及がそれだけ進んできたことを示すものであり、喜ばしい。