2 次元の発想から 3 次元の発想へ

2006/12/08 香月 秀文

◆少子化の傾向を受けて、大学の入学者数が連続して減少
◆大学の数はサイバー大学などの新設を含めて増加傾向が続き、750校強が存在
この2 つの要素は互いに対立するポジションにあり、各大学は解決策を探して努力しています。
◆東海大学はANAと提携して、パイロット学科を新設、1500万円の学費にもかかわらず、定員40名に対して、
400 名が応募。大学卒業と同時にパイロットの資格が取得できる。
◆京都精華大学では マンガ学科をマンガ学部に昇格し、より強力な教育体制を図る
両方とも現役の実務家が教授として参加し、学生のニーズを捉えているようです。
2 次元(平面)においては対立して、解決策が見出せない問題も、視点を変えて 3 次元(立体)に置いてみると、新たな解決策が乱せる可能性が出てきます。2 次元の世界では思考が止まってしまう事柄も、3 次元に置き換えてみると新たな思考がスタートします。
マーケティングの世界でも戦略構築を行う過程で「ビジネスの定義」をしますが、このときにも1つの方法として 3次元を使います。

事業領域(ビジネス)の定義

言い換えれば「わが社は何の会社なのか」「わが社の事業とは何か」 という問いに答えることが、ビジネスの定義をすることに他ならない。 このような問いに対する最も単純な答え方は、「われわれは電気メーカーである」 「我が社は化学会社である」 「わが社の事業は証券業である」 というように、ビジネスを製品や技術で規定することである。 しかし、T.レビットは、「マーケティング近視眼」という有名な論文のなかで、ビジネスを製品や技術によって規定するよりも、市場ニーズによって規定する方が良いことを主張した。 例えば、アメリカの鉄道会社が成功しなかったのは、自身を「鉄道会社」として狭く規定してしまったからであり、「交通会社」として市場ニーズによって広く規定しておけば成長の可能性があった、と言うのである。 彼の主張は、実際に多くの会社に影響を与えたようである。映画会社がエンターテイメント企業であると自社を規定したり、化粧品会社が「美と健康の会社」と名乗るようなことは、現代のわが国企業にも多く見られる。 しかし、広すぎるビジネスの定義には短所があることも指摘されている。例えば、「交通会社」という規定では、地理的範囲(都市内、都市間、大陸間)や、製品種類(乗用車、列車、船、飛行機)などの点であまりにも広がりすぎ、限られた経営資源をどういう分野に集中させるべきなのか、わからなくなってしまう。 このような問題点を打開するため、エイベルは図のような顧客機能、顧客層、代替技術、という3次元によるビジネス定義を提案した。顧客機能(WHAT)とは、企業が顧客に対していかなる機能を提供するかである。顧客の立場からみれば、その企業の提供する機能がどのようなニーズを充足しているか、ということに他ならない。例えば、レンジ製品の顧客機能としては、加熱、調理、などがある。企業は自社の提供する機能は何であるかを定義しなくてはならない。顧客層(WHO)とは、どのような顧客に対して機能を提供するかである。例えばレンジ製品といっても、主婦、単身者、業務用ユーザーなどのうち誰を対象顧客とするかを選択しなくてはならない。 代替技術(HOW)とは、顧客機能をどのような方法(技術)で実現するかである。例えば電子レンジ、電気オーブンレンジ、ガスレンジといった異なった方法の中で、どのような技術によって顧客ニーズを充足させるのかを決定する必要がある。 このように、3次元によるビジネスの定義は、企業が何を(WHAT)、誰に対して(WHO)、どのような方法で(HOW)提供するのかを明らかにする方法である。 企業は自社の環境や経営資源の分析を行なったうえで、3次元のそれぞれにおいて、自社に適したビジネスを規定する必要がある。例えば、ある特定の技術については強みを有しているが、特別に支持されている特定の顧客層はない、という場合には代替技術の次元においては特化して、その技術を使用した多くの製品を広い顧客層に提供していく、といったビジネスの定義が可能となる。 環境や経営資源が変化すれば、自社のビジネス定義も変更した方がよい場合もある。従来のビジネス定義を変更して、再定義を行なうことによって、その企業の戦略も画期的に変わる可能性がある。 例えば、ヤマト運輸は従来のトラック輸送中心の会社から、宅配便中心の会社へと変身を遂げたが、その際にはビジネス定義が3次元のそれぞれにおいて、大きく変化している。顧客機能の点では、大口の大きい荷物の輸送から小口の小さい荷物の迅速な配達へ。顧客層の点では、関東の業者中心から全国の最終消費者へ。そして技術の点では、大型トラックから中・小型トラックへ、また従来にはなかった高度な通信・情報技術の採用へ、というものである。

ビジネス定義の対照

先日行われた世界経営者会議において HONDAの社長のスピーチでビジネスの定義を「個人用の移動手段を提供する会社」とありました。これはなぜ小型ジェットに進出するのかの質問に対する答えでした。 2輪車→4輪車→船外機→小型ジェットと繋がってきます。