PMBOK第4版の改訂ポイント

2010/01/15 中嶋 秀隆

PMBOKが第3版から第4版に改訂されたが、そのポイントを説明してほしいという依頼を時々いただく。今回、幸いにも、キーパーソンの方とお話しする機会を得た。その時の議論を踏まえ、「第4版の刊行にあたり」(XXII―XXIII)に沿って解説しよう。

1.全てのプロセス名を「動詞+名詞」の形に統一。(日本語版は名詞形で統一)
⇒ 一例として、第3版では英語で ”5.2 Scope Definition” としていたものを第4版では “DefineScope”としている。筆者の知る限り、米国のビジネス英語で行動を表す表現は、「名詞」形よりも(よりダイナミックな)「動詞+名詞」の形を好む傾向が強まっている。この変更はそれと軌を一にするものと考えられる。
ちなみに弊社の研修『PM標準10のステップ』では、WBSのワークパッケージを日本語の表示には「〇〇をXXする」と表記することを奨めている。「〇〇を」がワークパッケージの成果物にあたり、「XXする」が完了基準となるからだ。
2.組織体の環境要因と組織のプロセス資産の議論に標準的アプローチを採用。
3.要求済み変更、予防処置、是正処置、欠陥修正の議論に標準的アプローチを採用。
⇒ 2-3でいう「標準的アプローチ」(standard approach) とは、「ひとくくりの表現」といった意味。つまり、プロセスのインプットとアウトプットを示すのに、本来なら中身を具体的に列挙すべきかもしれないが、便宜上、「組織体の環境要因」という具合に、ひとくくりに表現したということ。具体例は、本文の中でそのつど列挙している。例えば、「4.1.1.1 組織体の環境要因」では
3つの具体例、「9.2.1.2 組織体の環境要因」では4つの具体例をそれぞれ列挙している。
4.プロセス数を44から42に削除。2つのプロセスを削除。2つのプロセスを追加。調達マネジメントでは、6つのプロセスを4つに構成し直す。
⇒ 内容は明確である。
5.プロジェトマネジメント計画書とプロジェクト文書(プロジェクトをマネジメントするために使う)を区別。
⇒ 今回の改訂の最重要ポイントと見る向きもある。プロジェクトマネジメントにはたくさんの文書が必要となるが、その軸になるのは「プロジェクトマネジメント計画書」であり、それ以外の文書は補助的位置づけのもの(いわば、何でもあり)とした。(表A2のリストに整理)
6.プロジェクト憲章とプロジェクト・スコープ記述書を区別。
⇒ 第3版で重複があったところを、すっきり整理した。
例)「プロジェクトの前提条件」「プロジェクトの制約条件」が第3版では3回出てくる。
「プロジェクト憲章」(p.82)
「プロジェクト・スコープ記述書暫定版」 (p.86)
「プロジェクト・スコープ記述書」 (p.111)
これを第4版では、「プロジェクト憲章」(p.77)には入れず、「プロジェクト・スコープ記述書」(p.111)のみに入れた。(付録A2に整理)
7.第4章~第12章の冒頭のプロセス・フロー図を削除。
8.関連プロセス間のインプットとアウトプットを表示するため、各プロセスにデータ・フロー図を追加。
⇒ プロセスフロー図はプロセスの順序を固定することになり、柔軟性に欠ける場合がある。
データフロー図にすることにより、現場に適した判断が可能となり、適用範囲が広がる。
例えば、第3版の図11-2.「プロセス・スロー図」では、「定性的リスク分析」の後で「定量的リスク分析」を行う、しかるのちに「リスク対応計画」を策定するとしている。しかし、「定性的リスク分析」と「定量的リスク分析」の間に強制的な依存(前後)関係があるわけではないので、データそれぞれのアウトプットが情報として「リスク対応計画」に流れ込めば十分であろう。
9. 対人スキルと説明する付録を追加
⇒ 内容は明確である。

以 上