歩きお遍路もプロジェクト

2014/11/05 中 憲治

名古屋の知人K氏がフェースブックで、今年の四国 88 カ所歩きお遍路の結願を報告してきた。K氏は毎年四国八十八ヵ所歩き遍路を実行している。 1 年間のうちで何回かに分けて八十八ヵ所を歩いて回るプロジェクトである。今年の所要日数は 48 日だったが、八十八ヵ所のほか番外札所や四国別格札所などを回り、 著名な観光地も巡るという優雅なお遍路だった為、昨年より 8 日も多くの日数を費やしているという。

お遍路にはすべての札所を歩いて回る“歩き遍路”のほか、バスで、車で、あるいは自転車で廻るなど幾つの手段があるが、 その中でも総距離1400kmを歩いて回る“歩き遍路”はプロジェクトそのものである。その理由は以下の通りである。

① スコープ・品質、時間、資源の 3 つの制約条件が揃っている
② 計画は段階的詳細化が求められる
③ 計画があっても、実行段階では常にチェック&リペア―が求められる

1.3 つの制約条件
スコープは四国八十八ヵ所の札所を歩いて回り納経することがMUSTであるが、番外札所や四国別格札所も含める、 あるいはその周辺の観光地(例えば、桂が浜、琴平金毘羅さん参りなど)を各自のスコープに加えることもできる、 スコープ範囲設定は自在である。時間も結願(けちがんと読む*1)までの期間を自由に設定できる。歩き遍路の場合、 通常は 40 日から 50 日といわれているが、30 日以内に設定することもできる。私が会った人で話を聞くことができた人の最短は 25 日だった。資源は各自の体力と、投入資金であるが、お遍路の最大の問題は宿泊に費やす費用であり、出来るだけ安く完了するためには、早く歩いて全体の所要期間を短縮することである。しかし、早く歩くためにはそれなりの体力を必要とする(1 日に歩ける距離は長い人で約 40km、短い人では 20 ㎞前後とバラツキは大きい)要は、3 つの制約条件のどれを優先するかにより “歩きお遍路”の計画は大きく異なってくる。まさにプロジェクトである。

2.計画の段階的詳細化
“歩きお遍路”では 3 つの制約条件を定め目標を設定しても、詳細な計画の立案は難しい。40 日で八十八ヵ所の札所を回る、予算は○○万円以内で、優先順位は①スコープ、②時間、③資源と決めても、 これを基に 40 日間の計画立案は難し。天候の問題、道路の状況(遍路道の状況、特に山の中の道は状況が常に変化する、台風や大雨の影響で歩けない時もある) そのほか想定外の状況に遭遇するからである。体力の問題もある。そのため最初の 10 日間は詳細な計画(何番の札所まで歩き、どこに泊まるか)を立てるが、その後は、1 日に歩く距離を最長 40 ㎞、最短 30 ㎞とする・・などの大まかな計画にとどめ次第に詳細化していくことが必要となる。

3.実行段階でのチェック&リペア―
“地図は、現地と違う”という格言があるが、“歩き遍路”はまさにそれである。お遍路には詳細なガイドブックがある。 今までの経験者のブログなども多く掲載されている。しかし、それを基に計画を立てても現地に行ってみれば、想定と違っていたということが多く発生する。ガイドブック等の解釈の間違いもあるし 、それらが書かれた時とは時間の経過があることも多い。そのため」、計画は細かくチェクして、差異が生じればその日の計画の修正も、 翌日のみならず、その後の数日の計画の修正も余儀なくされる。

計画修正は、3 つの制約条件の優先順位に従って行う。時間が優先順位 1 位の時は、1 日の歩く時間を 10時間以上、 40km以上と修正することもよくあることである。パーソナルプロジェクトとしては“歩き遍路”は最適の活動といえるのではないだろうか!