効果と効率は異なる、まずは効果性の確認を

2006/10/02 津曲 公二

プロジェクトが決まった、納期も厳しい!さあ、すぐ作業にとりかかろう…
でもそれはちょっと待っていただきたい。すぐにも作業に着手したい気持ちはよくわかるが、そこに大きな落とし穴がある。

プラネットの好評商品、「プロジェクトマネジメント 標準10のステップ」の最初のステップは、「プロジェクト目標を明確にする」である。ここでは、なぜいまこのプロジェクトを実施する必要があるのか、つまり真のニーズを把握することから始めて、プロジェクト目標を文書化することをやっていく。300字以内がお勧めであるが、大事なことは、この300字の欄外にある。それは「除外項目」と呼ばれるものである。除外項目とは、このプロジェクトでは、これはやりませんよ、ということを明記することで、目標を明確にするためにはたいへん重要なことである。「まだ始まったばかりで、これはやらないとは何事だ」との反論もありそうだが、プロジェクトにおいては、選択と集中が欠かせない。あれもこれもという総花式発想では失敗する。

選択と集中は、言い換えれば、このプロジェクトに要請される必須のもの(作業、成果物)は何かを突き詰めることである。そのためには、プロジェクトの使命・目的などをあいまいなままにはしておけない。また、何をもって成功というか(成功基準)を考えることも必要になる。このような取り組みが、そのプロジェクトが終了したとき、プロジェクトの効果性を保証する。

このような効果性の確認のあとに考えるのが、プロジェクトの実施面における効率(生産性)である。過去に経験したことのある、類似プロジェクトの納期や総工数がいつまでも同じレベルでは困る。そこには生産性向上という実績が伴わなければ、マネジメント不在と言われても仕方がない。プロジェクトマネジメントのツールは効率向上のために発展してきた。ツールをうまく使えば効率向上に寄与することは間違いない。現代のプロジェクトマネジメントは確実にそういうレベルになっている。しかし、役に立たないプロジェクトが終了しても効率測定の対象外である。測定しても意味が無い。まずは効果性の確認をお勧めする理由はここにある。

我々がプロジェクトの現場でお手伝いするときの最初の合言葉は、「急がば回れ」である。プロジェクトに限らず、あらゆる仕事における基本のひとつと考えている。