プレゼンテーションのコツ その25

2012/07/11 村松 かすみ

第25回目は、
『「ラポール」を築く①』をご紹介します。

「ラポール」とはフランス語の「rapport」が語源で、意識調査や人類学的な調査、カウンセリングなどで面接者と面接対象者との間に築かれる親和的・共感的な関係を意味します。プレゼンテーションにおいては、あなたと相手の間で築かれる「信頼関係」のようなものです。あなたのプレゼンを相手に受け入れてもらうためには、信頼を得ることが必要です。信頼関係があれば、相手は好意的に話を聞いてもらえます。信頼は、「信頼してください」「大丈夫です」「任せてください」・・・と言葉を並べて得られるものではありません。ラポールを築く方法として、「ペーシング」と「バックトラッキング」がありますが今回は「ペーシング」を紹介します。
「ペーシング」は、相手にペースを合わせることです。私たちは、一般的に出身地や出身校が同じであったり、趣味や価値観が近いなど、共通点があると親密度が増します。 ただ、プレゼン相手に必ずしも共通点があるとは限りません。そこで、あなたが意図的に相手のペースに合わせることで、相手との距離感を近づける方法が有効な手段となります。その1つとして「ペーシング」があります。

ポイントは3つあります。

ペーシング①-体の動きを合わせる
商談中の相手が前傾姿勢であれば、あなたも前傾姿勢になります。相手がお茶に手をのばしたら、あなたもお茶に手をのばします。これは、「ミラーリング」とも言われます。「ミラーリング」とは、まさに相手の「鏡」になるということです。合わせる時のポイントとしては、タイミングを少しずらし、動きは相手よりも小さめにすることです。相手の動きを合わせることに違和感を覚えるならば、「呼吸」を合わせることに意識を向けてください。実はこれが一番効果的だったりします。「呼吸」に意識を向けると相手がおかれている状態――リラックスしている、何だか落ち着かない――などが慣れてくると次第に感じられます。

ペーシング②-雰囲気を合わせる
朝一番、職場で上司に挨拶をする時、上司が体育会系の人であれば、元気に「おはようございます!」と挨拶をしても違和感がありません。でも、物静かで余計なことはあまり話さないタイプの上司に、同じように元気よく挨拶をすると、「うるさいな」と思われる可能性があります。上司が良い悪いではなく、あなたが相手に意識的に合わせることが大切です。物静かな上司には、聞こえる程度の声の大きさで挨拶をすればいいのです。

ペーシング③-言葉を合わせる
相手が使っている言葉を使うということです。以前、都内にある有名なフランス料理店に訪れた際、私は店員に「お手洗いはどちらですか?」と聞きました。すると、「パウダールームでございますね。パウダールームは、通路のつきあたりを右に曲がったところにございます」と丁寧に教えてくれましたのですが、私は「お手洗いなんて言ってしまった。田舎者だと思われたに違いない」と、思わず顔から火が出そうなくらいの恥ずかしさを感じました。相手の言葉に合わせるのであれば、「お手洗いでございますね。通路のつきあがりを右に曲がったところにございます。表示はパウダールームとなっております。」といった説明になります。そうしていれば、さりげない配慮を感じさせ、店に対する印象もグンと上がっていたはずです。

プレゼンテーションの中でも、相手に合わせることから相手との距離を近づけるチャンスになるかもしれません。そうすれば、あな
たの提案も聞き入れてもらいやすくなることでしょう。