「心地よさ」と「えげつなさ」の間で

2019/07/20 中嶋 秀隆

 ビジネスをしていると、こちらが心地よいと感じる取引先がいる。反対に、ずいぶんえげつない商売をするものだとあきれるような取引先がいる。
 心地よい取引先とは、品質・納期・価格のどれについても、こちらの希望を受け入れてくれる。こちらが買手、相手方が売手であるとしよう。こちらが出す品質面での厳しい要求をむこうは素直に受け入れてくれるし、こちらが設定する無理な納期にも対応してくれ、採算を度外視するような低価格も受け入れてくれる。
 立場を逆にして、こちらが売手、相手方が買手であるとしよう。こちらが無理といえば、むこうは品質要求を取り下げてくれるし、納期が難しいといえば、仕方がないと妥協してくれ、高価格の要求も受け入れてくれる。
 えげつない取引先は、売手としても買手としても、上のケースの正反対の所作をみせる。面白いのは、それぞれの取引滝のその後の進展だ。親しいビジネスパーソンの実感を引こう。「こちらが“心地よい”と感じる取引先は、遅かれ早かれ、市場から姿を消す。そして、『ここまえやくざなことを言うか!?』とこちらがあきれるような、“えげつない”取引先は、その後もビジネスを成功させている」ということだ。
 「心地よさ」と「えげつなさ」の間のどこかに、めざすべきポイント (Happy medium) がある。日々の意思決定は、それをさぐる行為にほかならない。