「報・連・相」について書いているが、今月は、報告に関するちょっと本筋から外れたことについて記したい。それは、コミュニケーションに関する、文化的背景の問題である。それは、ハイコンテクストとローコンテクストと呼ばれるコミュニケーションスタイルの事である。
パトリック・ハ―ランの「ツカむ!話術:角川ONEテーマ21」にこの 2 つについて記述があるので概要を記す。「日本では『一を聞いて十を知る』という、アメリカでは『十を聞いて一を知る』くらいの感じです。文化人類学者のエドワード・ホールはこの違いを『ハイコンテクト文化』『ローコンテクト文化』と名付けました。単一に近い民族で、言語、価値観、倫理観といった文化的背景の共通度が文化圏である『ハイコンテクト文化』と多民族で,互いの文化的背景がばらばらな文化圏である『ローコンテクト文化』では、コミュニケーションスタイルもことなる」
「それはちょっと?」「前向きに検討します」などはビジネスの場面では良く使われる言葉である。ハイコンテクト文化の日本では、この 2 つはやんわりとした断り(NO)の返事であると受け取られるが、ローコンテクト文化の国においては、YESかNOなのか良く分からない、本当に検討して暮れると受け取られる可能性が高い。日本においては、「忖度しろ」「空気を読め」「行間を読め」「察しろよ」などの言葉が良く飛び交う「はっきり言わなくても判るだろう?仲間なんだから!」といった心の内の気持ちが込められた言葉である。ハイコンテクト文化を共有している組織においては通じるが、文化的背景が異なる時は、必ずしも通じるとは言い切れない。プロジェクトのステークホルダーにおいては、同じ日本にある企業であったとしても組織の持っている文化的背景は異なることもよくある。プロジェクトの報告では、出来るだけ明確に意図が通じるローコンテクトのコミュニケーションではっきり伝えつることが重要である。昨日、ハイコンテクトな会話として、次のような親子の会話がFacebookで紹介されていた。引用する。
「大阪環状線。ホームから線路を覗き込む幼稚園児の腕を引っ張り、頭をはたくお母さんが『やめや!ニュース載るか? ○○幼稚園の年長さん電車に轢かれるて(怒)全然お面白ないで!わかるか?』大阪のおかん、凄いハイコンテクトな叱り方するよなと感心したわ。危ないとかアホとか一言も言わないのな。」
関東と関西、同じハイコンテクト文化の日本においてもその程度(深度)は違うようである。