「全体で受ける」

2004/02/18 中 憲治

NHKに「課外授業・先輩ようこそ」という番組がある。各界の著名人が自分の出身である小学校・中学校を訪れて、後輩に当たる小・中学校の生徒に特別授業を行うというものです。昨年末のこの番組で、名大大学院の生田教授が母校の小学生を訪問、後輩である小学生を対象に一つの実験を課題にした授業をしていました。
その課題実験とは、5メートルの高さから生卵を落としても割れなくする工夫を考えるというものです。生徒は、各自に与えられた厚紙(A2版程度の大きさ)1枚を材料にこの課題を達成する工夫を考案し、実際に実験してみます。結果は39名のうち9名が見事に実験に成功しました。9名の成功した生徒の考案した工夫はそれぞれ異なっていましたが、成功した要因は2つに要約されていました。
その一つは、厚紙で作った装置全体でできるだけ空気抵抗を大きく受け、落下速度を遅くする。もう一つは、落下して、地面に衝突する際に生卵が受ける衝撃をできるだけ小さくするために、装置全体で衝撃を吸収させる。といったことでした。
(後者の考え方は、自動車が衝突した際、乗っている人が受ける衝撃をできるだけ小さくするために、フロント部分はできるだけ潰れやすい構造であることにも見受けられます。)
この二つの要因に共通していることは、“全体で受ける”ことではないでしょうか。
クリティカル・チェーンPMのバファマネジメントは、プロジェクトの個々の作業遅れに対処して、全体としてバファを設定します。制約理論の重要な概念の一つは、“部分最適から全体最適へ”です。実は、12月17日付けの今週の一言で紹介した「ナンバ走り」の根底に流れている理論にも、人の運動エネルギーを身体全体から生み出すという古武術の考えが生かされています。この話はまた次の機会に。